[book][レビュー]エンジェル エンジェル エンジェル/梨木香歩(ISBN:4101253358)

新潮文庫で出たので早速読んだんですが、いやーちょっとすばらしい。なにがというと、明らかにミステリーな手法を取り入れてるのが。
順を追って説明しますと、梨木香歩は、基本的には児童文学者とし知られてます。とはいっても人間の悩みや葛藤などの内面世界(と現実世界の狭間)を、独特のファンタジー世界で描きながら深く掘り下げていくという感じの物語が多くて、はっきりいって大人向けの童話ファンタジーだと思います。
で、このお話は、ぼけてしまった祖母の中に封印されていた内面世界がファンタジー的に語られ紐解かれていく、ような物語で*1、基本的には作者の一貫したテーマを継承しています。が、先に書いたように、綿密な伏線とか、2つの視点が交互に出てきて思わせぶりに少しずつ見せていくところとか、ミステリーっぽくて、さらに確信犯的な配置をしている。なんというかエンターティメントとしても楽しめると思います。
そういえば梨木香歩北村薫の「月の砂漠をさばさばと」(ISBN:4104066036)の解説を書いていたなあ。影響を受けてるんじゃないかと勝手に思ってしまう。
同作者の作品としては、「裏庭」(ISBN:4101253315)という傑作があるんですが、とっつきやすくはないんで、梨木香歩入門(?)としてこの本はいいかも。あとは、「西の魔女が死んだ」(ISBN:4101253323)は、これは子供でも読めるような童話なんでしょうが、ほっとするよいお話です。この辺は軽い気持ちで読めるのでまあ読んでみてください。

*1:はしょりすぎてようわからんでしょうが、まああんまり説明しちゃうとこれから読む人がつまんなくなるんで。