複雑系入門(ISBN:4871885607)

知るひとぞ知るSFCの井庭さんが修士の時にかかれた本。修士1年でこんな本が出せるというのはすごいですね。。。
内容としては、複雑系に対する主張とかではなくて、一般的な複雑系に関係するモデル、ツールから対象までを俯瞰的に眺めた入門書なんですが、この本がよいのは、はじめに複雑系という定義と、それを理解する上での「ツールやモデル」と、理解する(複雑系)「対象」をはっきりと分けているところだと思います。
はっきりいって個人的な主観では読む本ごとに複雑系の定義も、ニュアンスも違う気がしてます。なんで、もしかしたらこの本の分類や考え方は後々正しくなくなるかもしれない。けど、問題はこの本の定義が正しいかということより、先にそのことをきちんと断って話を進めているところがよいと思う。わりと、いきなり事例からはじめて、こういうのが複雑系だ、という文章をいくつか読んだことがあるので、そういう場合、複雑系の意味があいまいなままになって、違うレベルでのずれた理解をしてしまう危険があります。
個人的にはもうすこしマルチエージェントとかそのあたりに関する部分についても述べてほしかったかなあ。ゲーム理論とか。
あと、このあたりを勉強しようという方には「複雑系とは何か」(ISBN:4061493280)もまあとりあえず読んでみましょう。複雑系の入門書にはいろいろ意見はありますが、ともかくはじから読んでみたほうが早いです。

そうそう、この本、存在は前から知っていましたが、挿絵を書いたのが研究室の先輩だったとは…。しりませんでした。そういえば、絵がうまかったです。