カタコンベ/神山裕右(ISBN:4062125358)

カタコンベ
第50回江戸川乱歩賞作品。
結構前に買ってちょっとしか読んで無かったけど、読みはじめるとさくさく読めた。新幹線の中2時間ぐらいで大体読み終わってしまった。
基本的には洞窟からの脱出劇な訳なんだけど、緊迫感や次々と来る困難な展開などどきどきしながら読める。まあ、それだけではただのハリウッドぽい「主人公が単身乗り込み活躍するアクション物」なわけなんだけど、そこはミステリーがうまく絡められていたり、それぞれの人物の思惑や背負っているものをちらつかせながら進んでいくあたりよい感じ。特に、何気に少しずつ本筋とは別の伏線を張りつつ、最後の最後に「もう一つの真実」が分かるという部分の構成はうまいなあと思った。本当は、脱出(救出)することだけがこのお話のゴールではないのだと。
ミステリー部分については、割と素直。伏線もなんとなくご丁寧なので意外性はないかな。あと、最後の部分は個人的にはエピローグ的なものがほしいと思った。それは蛇足だろうと思う人もいるかもしれないけど。とはいえ全体的には、作者のパワーが感じられるし、純粋に楽しめる作品でした。